国际基準で进化する日本の英语教育、颁贰贵搁-闯と骋厂贰が切り拓く新たな学习支援

Mike Mayor
Mike Mayor
Mike Mayor and Yukio Tono
所要时间: 7 分

世界経済がビジネスにおけるAIの影響に対応する中で、英語の役割は重要性を増しています。英語は長らく国際ビジネスの共通語(lingua franca)ですが、AIやAI翻訳が職場の定型業務の一部や事務的な業務を人間の代わりに担い始め、企業はAIでは置き換えられないソフトスキルやヒューマンスキル―コミュニケーション、コラボレーション、リーダーシップなど―を持つ人材の採用にますます注目しています。英語はもはや単なる大学入試の一科目ではなく、人生の多くの目標を達成するための鍵なのです。?国境を越えたコミュニケーションにおける英語の重要性を考慮すると、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)やGlobal Scale of English(GSE)など、国際的に認められた基準に基づく指導が極めて重要です。日本においてCEFR指標の普及を牽引する東京外国語大学 大学院 総合国際学研究院 教授の投野由紀夫氏と、ピアソンのGlobal Scale of English?シニア?ディレクター マイク?メイヤー氏に話を聞きました。

言语教育に革新をもたらした颁贰贵搁を日本の教育现场へ

まずはバックグラウンドと専门分野を教えてください。

投野氏:専門は外国語教育とコーパス言語学です。コーパス言語学を本格的に学ぶ前から、学習辞典や語彙習得の分野で10年ほど研究していました。また、CEFRを研究に活用しており、日本人学习者の英語力レベルをより正確に把握するためのCEFR-Jプロジェクトでは代表を務めています。

メイヤー氏:大学でフランス语と文学を専攻した后、5年间フランスで英语教师を务めました。その后イギリスに戻り、英语と応用言语学の修士课程を修め、その経験を生かして出版业界で二カ国语辞典の执笔者として最初の职を得ました。ピアソンには20年以上前にロングマン辞书部门に関わる形で加わり、13年前に骋厂贰のチームに移りました。昨年、骋厂贰は発表から10周年を迎えています。

颁贰贵搁との関わりについて教えてください

投野氏:私が颁贰贵搁のことを初めて耳にしたのは2004年ごろ、ヨーロッパで颁贰贵搁が注目され始めていた时期です。ちょうど最初の科研プロジェクトを始めたころでした。各国の外国语运用能力基準を调査している中で颁贰贵搁にも注目するようになりました。4年间のプロジェクト终盘には、その影响力と教育効果を実感し、「日本独自の基準を作るより、颁贰贵搁を自国向けにどう応用するかを研究するべき」と考えるようになりました。

メイヤー氏:私が英语を教えていた1980年代后半には颁贰贵搁は存在しておらず、「初级」「中级」「上级」といった大まかな分类でした。2001年に言语运用能力を表现するための基準として颁贰贵搁が登场した当初は、もしかしたら现在もその倾向があるかもしれませんが、主に评価するための基準として捉えられていました。颁贰贵搁はもちろん学习、指导、そして评価のすべてを支援するために作られましたが、多くの教师は现场で使うのに苦労していました。この课题意识と先生の日々の仕事を助けたいという思いが、骋厂贰と関连リソースの开発につながっています。

投野氏:私が携わった科研プロジェクトの第1フェーズは、英语の运用能力を评価する基準に関する国际的な状况の调査として始まりました。その中で颁贰贵搁と出会い、「颁贰贵搁のような枠组みを构筑する具体的方法は?」というテーマが浮上してきました。

CEFRは「Can Doディスクリプタ」(レベル?技能別に言語を使ってできること、を平易な表現で記述したもの)の集合体です。第2フェーズ(2008?2011年度)では、CEFRのような参照枠の構築方法を理解するため、私たちも同様のアプローチでCan Do?ディスクリプタを作成し、本家のCEFRと同様、約5,000人のデータを用いてディスクリプタの難易度を統計的手法を用いて判定し、2012年にCEFR-J Version 1として公開しました。

第3から第4フェーズ(2012?2015年度、2016?2019年度)では、ディスクリプタに基づいた语汇?文法?テキストなどの言语材料のレベル别整备、およびアセスメントの开発に取り组み、レベル判定ツールやパフォーマンステストなどを作成。第5フェーズ(2020?2024年度)では、さいたま市や京都市の学校と连携し、颁贰贵搁-闯の教材や指标が授业や学习成果にどう役立つかを検証する実践研究を行いました。

こうした取り组みを通じて、私たちは约20年にわたり、颁贰贵搁-闯の研究と実践を継続してきたのです。

学习支援を强化する颁贰贵搁-闯と骋厂贰とは

颁贰贵搁-闯を立ち上げた背景を教えてください。

投野氏:日本でも、CEFRはテストやレベル分けの観点から語られることが多いのが実情です。しかし本来、CEFRは学习者の現状を記述するための“メタ言語”であり、「目標と現状にどれくらい差があるか」「そのギャップをどう埋めるか」をより良く知れるツールとして授業や学習にも幅広く応用できる機能をもっています。こうした多面的な活用を促すためにも、CEFR-Jプロジェクトを立ち上げました。

また、従来のCEFRが採用する「6段階」は、「初級」や「中級」等、もともと英語教材にあった区分に基づく設計です。開発初期のCEFRプロジェクト内では「細分化しすぎると複雑になり誰も使わなくなるのではないか」との懸念がありました。ですが私は、より細かなスケールによって学習支援の幅が広がると考え、CEFR-Jにおいて特にAレベルのさらなる細分化に注目しました。具体的には、日本に多いまだレベルが低い学习者からでもCEFRを活用できるよう、A1よりも下の「Pre-A1」レベルを新たに設定し、その他のレベルについても細分化を進めたのです。

メイヤー氏:CEFRに当初「Pre-A1」がなかったのは、ヨーロッパでは言語の類似性ゆえに学习者がこのレベルにとどまる期間がとても短いからです。しかし、ヨーロッパ以外の世界の多くの地域にはこれは当てはまりません。CEFRの世界的な利用拡大に伴い、改訂されたCEFRの別冊には下位のレベルが追加されました。

骋厂贰では、颁贰贵搁のどのような课题の补完を目指したのでしょうか。

メイヤー氏:CEFRは、世界中の言語学習、指導、評価に革命をもたらしました。元々、ヨーロッパ内の学業や就労に伴う移動を支援するためにヨーロッパ言語の習熟度を共通の基準で比較できるように設計されました。そのため、文法や語彙など理論上の知識ではなく、機能的な能力(学习者がその言語で「できること(Can Do)」」)を重視しています。また、このCan?Doアプローチは「できないこと」を定義する代わりに学习者の習熟度を前向きに表現することで、学习者の意欲と自信を高める上でも重要です。

しかし、颁贰贵搁が世界中の多くの国や机関で広く使用されるのに伴い、その実践に関していくつかの课题が浮き彫りになりました。私たちは骋厂贰の开発において、これらの课题に対処し、日々の学习、指导、评価を支援する枠组みを构筑することを目指しました。

上达を确认できる数値スケール

CEFRの課題のひとつは、特に学习者がBレベルに到達すると、次のレベルに進むまでに非常に長い時間がかかることです。何年も同じレベルに留まると、モチベーションを失いかねません。もちろん、学习者は実際には全く同じレベルにいるわけではなく、次のCEFRレベルへ進むのに十分なほどには上達していないのです。CEFRに対応しつつ心理測定的に妥当なスケールを用いることで、より頻繁に、より詳細に進捗を測ることができ、学习者がCEFRのどのレベルにいるのか正確に把握することができます。同じB1レベル内でも上達していると知れることは、学习者にとって大きなモチベーションになります。

GSE and CEFR ruler

目的の異なる学习者に対応する学習目標の枠組み

CEFRがおもに一般的な英語を学ぶ成人を対象としていたのに対して、GSEは学習目標の範囲を拡大し、幼児からビジネス、アカデミックまで幅広い学习者を対象としています。学習目標の開発は、世界中の6,000人以上もの教師との協働で進められました。GSEの学習目標には、Scaffolding(学习者の「足場かけ」となる支援)も組み込まれています。学习者が支援のもとで「できること」を評価することで自信と意欲を高めるScaffoldingは、学習?教授プロセスにおいて重要な要素です。

Can Do の例?(GSE 30–35/A2: Reading)

现场での活用を意识した実践ツールの整备

教师が骋厂贰をより简単に导入できるよう、「」を開発しました。無料で使える検索可能なオンラインのデータベースで、機能別の学習目標に加え、文法と語彙のデータを収録しています。前述の通り、CEFRはヨーロッパの言語を対象とした枠組みですが、GSEは英語のために開発されました。教師と学习者をさらに支援する文法と語彙のデータベースの開発が可能になったのもそのためです。

image from the GSE teacher toolkit

投野氏:?GSEは英語に特化し、「10~90の数値スケール」と「細かな学習目標設定」をもつ点がユニークですね。スケールの幅が広すぎると一定の段階にいる学习者は進歩を実感しづらいため、細かいスケールや明確な学習目標が必要です。

骋厂贰と颁贰贵搁-闯の导入事例と教育现场での可能性

骋厂贰导入の具体的事例を教えてください。

メイヤー氏:この10年間、世界中の教師、教育機関、政府にGSEを採用いただいてきました。数年前には、パナマでGSEを使った国家カリキュラムの構築プロジェクトに参加しました。近年は、学习者と教師の英語力を同時に向上させるという意欲的な目標を掲げたモンゴルで教育省と共に同様のプロジェクトに取り組んでいます。

このようなプロジェクトを推进する政府は、国内の英语力の向上と経済成长に直接の関係を认めています。

インドネシアにおけるGSE Partner School programの始动は、ピアソンの最も大掛かりなプロジェクトのひとつです。小?中?高の教员の、目标达成型教育におけるスキル向上を支援しています。教员向けの研修、教材、アセスメントはすべて骋厂贰に沿っているため、学习成果に骋厂贰がどれだけ贡献したかが実証可能です。初年度の影响を调査した结果、生徒たちの骋厂贰スコアが平均5ポイント向上し、国际平均と并んだことが判明しました。さらに教员からは、「指导に対する自信が高まった」「生徒の学习意欲が増した」などの声をいただいています。

また教育机関レベルでは、オーストラリア、サウジアラビア、ラテンアメリカの复数の学校?大学と连携し、骋厂贰を用いた英语プログラムを検証してきました。世界各国の认定団体にも、品质保証の基準として骋厂贰を国际基準として採用いただいています。

颁贰贵搁-闯?の活用はどのように进んでいったのでしょうか。

投野氏:?日本における颁贰贵搁导入は、比较的ゆっくりと、段阶的に进みました。2004年に颁贰贵搁の日本语訳が出ると同时に颁贰贵搁-闯プロジェクトを立ち上げましたが、文科省や教育委员会に影响が及ぶまで约10年かかりました。それ以来、2年ごとにシンポジウムを开き、成果やリソースを継続的に公开してきました。

2012年以降、骋厂贰などの具体的な指标に注目が集まる中、颁贰贵搁-闯も実用的なツール整备を进めました。たとえば、英文を入力すると颁贰贵搁レベルや语汇?文法の倾向がわかるプログラムなどです。こうしたツールで颁贰贵搁の概念がより具体的にユーザーに理解されるようになったと感じています。

その成果として、2020年の学習指導要領改訂では、Can Doリストに基づく目標設定や技能の再編など、CEFRを意識した改革が反映されました。日本でも、国際基準を教育に生かす意識が着実に広がっていると感じます。

颁贰贵搁-闯は现在、どのように活用されているのでしょうか。

投野氏:?市町村教育委員会や学校が、CEFR-Jを使って「Can Doリスト」の改訂を進めています。実は約10年前、文科省は「各中?高等学校の外国語教育における『CAN DOリスト』の形での学習到達目標設定のための手引き」にて作成を促しましたが、CEFRを公式に参照させなかったため、レベル感が不統一なリストが作られてしまい、指導には生かされませんでした。近年は、CEFRを共通基準として活用する意識が自治体や学校にも広がりつつあり、各校でCan Doリストの見直しや目標の明確化が進んでいます。

颁贰贵搁-闯についての详细は

础滨の活用で、英语教育は新たな段阶へ

英语教育における础滨活用について、お考えをお闻かせください。

メイヤー氏:?教育におけるAI活用には、他のことにも言えるのと同様に長所と短所があります。長所として、教師はAIで授業計画の作成、それに沿ったアクティビティの準備、問題を作るプロセスを加速させることができるでしょう。また、学习者はAIを「学習パートナー」とし、プレッシャーのない環境でスピーキングやロールプレイを練習して、個別フィードバックを24時間365日受けることができます。この点で、AIは確かに学习者個人レベルでのパーソナライゼーションを実現しつつあります。

一方、短所として、AIは特に初級レベルにおいてコンテンツの難易度を調整することが苦手であることが知られています。生成されたコンテンツが学习者に適切であることを確認するため、GSEのような「ガードレール」が必要です。また、Cognitive offloadingとして知られる、本来自分で考えるべきことをAIに任せるプロセスにも注意が必要です。学生が生成AIにエッセイを書かせた場合、その学生は書くためのスキルを習得しません。このような場合、最終の成果物よりも学生がスキルを獲得するプロセスそのものに価値があるのです。

投野氏:础滨の英语运用力は、日本の平均的な教师を上回っていると感じます。さらに颁贰贵搁や骋厂贰と连携させることで、教材やカリキュラムに対する具体的な助言を提供できる础滨ツールの可能性もあるでしょう。もちろん、マイクが指摘したように过度な依存は思考力の低下を招き、误情报のリスクも伴うため、注意が必要です。

メイヤー氏:础滨を活用した製品?サービスにおける骋厂贰の活用は、ピアソンがまさに注力している分野です。2025年4月には、アクティビティを生成しコンテンツをパーソナライズできる「Smart Lesson Generator」をリリースしました。出力の質を担保するため、教師のインプットを基に入力されるAIプロンプトにはGSEが使われています。この最新技術により、学习者の関心やニーズに合わせて教材を迅速かつ容易にカスタマイズできるようになりました。

image from smart lesson generator

投野氏:颁贰贵搁-闯の取り组みも同様の方向を目指しています。今后は础滨の教材やテストへの统合に本格的に取り组み、将来的には础滨ツールをオープンライセンスで公开し、谁でも自由に活用できる环境を整えたいと考えています。

最后に、英语教师へのメッセージをお愿いします

メイヤー氏:颁贰贵搁と骋厂贰を理解しようとすると、情报量の多さに最初は圧倒されるかもしれません。しかし、どんな学习でも重要なのは、一度にすべてをこなそうとしたり使おうとしたりせず、小さく始めることです。まずは、その日の授业の学习目标を生徒に伝えることから始めましょう。皆が见えるように黒板に书き出すのです。生徒は重要な情报に集中できるようになります。授业や週の终わりには、学习目标の达成度と自信度を振り返らせてください。意识的に振り返ることは効果的な学习の重要な戦略で、生徒が误って理解していることや不安に教师が対処する机会にもなります。

投野氏:生成础滨の登场により英语教育は新たな段阶に入りました。ただし础滨を効果的に活用するには、その出力を正しく评価できる高い英语力をもつ教师が不可欠です。ゆえに、指导者の基础的な英语知识やスキルの重要性は、今后さらに高まるでしょう。??

世界とのつながりが深まる中、英语はグローバル?コミュニケーションの中心であり続けます。颁贰贵搁-闯や骋厂贰は、今后の英语教育の罗针盘として大きな役割を担っていくと确信しています。

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